山猿塾だより 丹波山猿塾だより 丹波山猿塾だよりバックナンバー

ここは、丹波市島で山猿塾を主宰する青木慧さんからの便りのコーナーです。


目  次
◆山猿塾だより◆191 動物&人との交流 FAGRI掲載日 98/02/09 ◆山猿塾だより◆192 動物との知恵比べ FAGRI掲載日 98/02/12 ◆山猿塾だより◆193 薪ストーブの産物(上) FAGRI掲載日 98/02/12 ◆山猿塾だより◆194 薪ストーブの産物(下) FAGRI掲載日 98/02/13 ◆山猿塾だより◆195 自然に即した養鶏をめざ FAGRI掲載日 98/02/18 ◆山猿塾だより◆196 正面からシカ来襲 FAGRI掲載日 98/02/21 ◆山猿塾だより◆197 浅知恵&マイペース FAGRI掲載日 98/02/25 ◆山猿塾だより◆198 自給野菜の味と効率 FAGRI掲載日 98/03/06 ◆山猿塾だより◆199 増えてきた読者見学 FAGRI掲載日 98/03/07 ◆山猿塾だより◆200 春まき野菜の準備 FAGRI掲載日 98/03/09

Contents Copyright 1996,97 Satoshi Aoki


00020 ◆山猿塾だより◆191 動物&人との交流 FAGRI掲載日 98/02/09 ◇ツルの飛来と思ったら◇  昨夜からの雪が久しぶりに20センチばかり積もりました。今朝、番犬のゴンは建築 中の鶏舎の床下で熟睡していましたが、彼を連れ家族そろって敷地内を見回ったあと3、 40分だけ散策に出かけました。働くばかりでなく、今日は机に向かいます。  昨日、鹿の防除網に重ねて金網を張り終わり、いまのところ鹿やタヌキなどの野生動 物のイタズラの痕跡は見当たりません。が、これも陸上を動く動物にかぎっての話です。 数日前には、全長1メートルもあるツルと見間違えるような鳥が飛来。図鑑で調べると アオサギのようです。  池に下りて魚を漁り始めました。イタチにも捕られて絶滅寸前の池の魚を捕られては と、カメラを持って撮影し追い払いました。鶏の飼育を始めれば、小さな雛のあいだは タカやトンビにもさらわれる心配があります。  しかし、いまから警戒しているイタチにしても、わが家で我が物顔で暴れ回っていた ネズミを片付けてくれた功労者です。イタチが目に付くようになってから、ネズミの姿 は家の周辺ではほとんど見かけなくなりました。この点ではイタチさまさまです。 ◇隣保の新年会◇  わが家も自宅が完成して昨年4月に地元の集落、市ノ貝に「村入り」しましたが、一 昨日は隣保の新年会が町内の料理屋であり、夫婦で参加しました。隣保はわが家を含め て6軒になりました。それぞれすでになにかとお世話になっており、いまさらという感 じですが、簡単に仲間入りの挨拶をしました。  市島町猟友会会長の青木謙三さんも同じ隣保です。何度か鹿やイノシシの肉を御馳走 になっており、山猿塾参加のみなさんも御存じのはずです。登り口の水田1反を借りる のもこの謙三さんからです。  彼は最近、勤め先の会社を退職し、間伐材で物置を自力で建て始めました。電動工具 など、必要な物は提供する約束になっています。これからは百姓や炭焼きをするそうで、 炭窯も造るとはりきっています。毎日、1日が短いといっています。  この土地にきて、自然の動物たちとの交わり、人と人との交流も豊かになってきまし た。近隣の農家とも知り合い、なにかと助け合えると思います。私も間伐を引きは受け ていますし、飼料用に屑米をもらう約束にもなっています。鶏が産卵を始めたら分ける ことにもなります。 ◇週刊金曜日20号を見てください◇  『週刊金曜日』の2月20日号のコラム「本の自己紹介−自薦」に、拙著『やったぜ!  わが家を自力建築−毒漬け住宅に住めるか』が掲載の予定です。ぜひ御覧ください。 同誌には、編集委員で旧知の同業者、本多勝一氏の依頼で、コンピューター病について 随筆を書くことにもなっています。  本多氏は、手紙で一度、私の農園(?)を見に行きたいと書いていました。彼も農業 を始めようとしています。こういう有志は各分野で増えていくことでしょう。  仕事場からパソコン越しに雪景色をながめながらこの一文を書きました。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00023 ◆山猿塾だより◆192 動物との知恵比べ FAGRI掲載日 98/02/12 ◇正面からやってくるネコ◇ サナギマンさん(#21)  このところ、農作業、山仕事を中断し動物対策です。知恵比べだけで終わればいいの ですが、飯の種にかかわります。山猿塾だけではなく、丹波でも山間部では深刻です。 丹波新聞(2月12日付)によると、シカ、イノシシ被害にどう対応するか、氷上郡農 業改良普及事業協議会が農作物被害対策研究会を開くようになりました。  さて、わが家ですが、山に囲まれた敷地の東側はバッチリと金網も張り終わりました。 雪の朝は動物たちの足跡でその効果がわかりやすいので、ていねいに観察して回ってい ます。効果てきめんで、シカやタヌキはきていません。  ところが、積雪があった3日前、金網にそって動物の足跡がありました。金網の外側 の山から金網まできた足跡は、そのまま山に引き返していました。が、金網の内側にも 足跡がありました。やがてネコだとわかりました。これは盲点でした。  ネコは人間と同様に堂々と正面の林道を登ってきます。一昨日はそのネコを見付け、 投石して追っかけました。いつものように山側へ逃げようとして、あてこちで金網にぶ つかってあわてていました。結局、本宅の裏側を回って林道から逃げました。  鶏を飼うとなると、イタチ、キツネなどの野生動物だけではなく、ネコの対策が重要 になってきました。ネコがやってくる目的は、「タヌキの餌場」と称して捨てている残 飯です。だから、タヌキの餌場を廃止しようと思います。  鶏を飼い始めたら、鶏の運動場、つまりサナギマン果樹園の周辺に残飯をばらまき、 鶏に拾わせようと思います。コンポストも運動場内に設置し、鶏の食べ残したものだけ 入れようかと考えています。  しかし、番犬のゴンも鶏と一緒に「放牧」しますので、女房はゴンも残飯を食べて太 るのではと心配しています。これはゴンが登れない高い残飯置き場を造れば解決しそう です。  ただ、木登りもできるネコを鶏舎と運動場内に誘い込む結果になりかねません。なに せゴンはネコでもタヌキでも薄目で見て寝ているだけで、番犬の役目を果たしません。 だが、いろいろやってみるしかありません。 ◇手間取る鶏舎造り◇  もともとイタチやネコを想定に入れて鶏舎を高床式にしていましたが、彼らや卵を盗 みにくる蛇なども想定すると、鶏舎造りもなかなかです。今日も餌箱や給排水の造作に かかりましたが、細かい細工が必要で手間取っています。  餌は鶏舎の外からやれる構造にしていますが、この餌入れにも開閉できる金網の戸が 必要です。水も山水をホースで引くつもりですが、ホースも蛇などがつたってこないよ うにトタン板かなにかで、モドリを工夫する必要があります。港に停泊する船が、船を つなぐ綱にネズミが登ってこないように付けているようなものです。  という調子で、いろいろと知恵をしぼっています。この知恵比べに負けたら、鶏の命 はありません。私たちも丸損です。おいしい自然飼育の有精卵や鶏肉が、食べられなく なります。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00024 ◆山猿塾だより◆193 薪ストーブの産物(上) FAGRI掲載日 98/02/12  わが家の冬の贅沢は薪ストーブによる暖房です。薪ストーブをおいている土間に入る と、たいがいの人が「暖かいですね」「薪はいいですね」といいます。自分の汗で近隣 の森林を間伐し、搬出したものを燃しています。経費は自分の汗代(ビール代など)だ けです。経費はタダでもそれだけの手間がかかりますが、暖房だけではなく、薪ストー ブの産物はばかになりません。  だるまストーブで薪をたいていますが、8mのステンレスの煙突を付けています。今 年は暖冬で木酢液の採取を半分あきらめかけていました。だが、ここへきて寒さがつづ いている一方、備えの乾燥した薪が底をついてきてとれたての生の間伐材を燃していま す。そのおかげで粗木酢液が現在約50リッターとなり、必要量が採取できる見込みで す。  8mの煙突は暖房効果を高めるため土間をくねらせてほぼ水平に横にはわせ、外に出 しています。垂直部分が約3m、水平部分が約5mです。煙突がつまり始めるまではほ ぼ完全燃焼していますが、くねらせて横にはわせている部分に次第にススがたまってく ると、ことに生木が蒸し焼きの状態になっていきます。  このときが粗木酢液を採取する絶好の機会です。外気に触れて冷却される風防や外の 煙突から汁が落ち始めます。その汁は次第に水平部分の煙突の継ぎ目からも流れだして きます。外の煙突の下では、汁の落下地点に広い容器で受け、玄関口の継ぎ目では小型 の容器で受けています。  蒸し焼き状態では暖房効果は落ちますが、粗木酢液を採取する絶好の機会を逃さない ようにしています。薪ストーブの熱気は換気扇で仕事部屋や寝室などにも送り込むよう にしていますが、その暖房範囲を狭め、あるいは少々の寒さはがまんして粗木酢液をた めます。  煙突はくねらせて水平にはわせているため、20−30日もすればススで詰まってし まいます。最初は煙突掃除がたいへんなロスに感じていました。だが、木酢液や木ター ル、ススや灰などを有効に活用するようになってからは、煙突が詰まり掃除をするまで が1つの楽しみに変化しました。  煙突を掃除してしまえば、ストーブもよく燃え暖房効果はあがりますが、掃除の時期 はがまんできるところまで延期します。天気予報を聞いて大型の寒波の到来を見計りな がらその直前に掃除し、暖房効果を上げます。昨冬もこうして粗木酢液約100リッタ ーを採取し、主に木の防腐剤として活用しました。  外で受けた容器にはどうしても雪や雨が入りますので、バケツに入れて日の当たる軒 下においておくと、天日でまもなく半分くらいに濃縮されます。木タール分は、粗木酢 液を揺すらないように静かにおいておくと自然沈下しますが、私は分離しないようにわ ざと撹拌して、タール分を含んだ粗木酢液のまま活用しました。  雨にぬれる雨戸兼テラス、水がかかる浴室の壁(いずれも杉)、濡れ縁(桧)に塗り ました。また、作業小屋の増築分の屋根は、テスト的に瓦代わりに杉の野地板でふきま したが、この屋根にも粗木酢液を塗りました。  これらはいずれも粗木酢液を塗ってからすでに半年から1年たっています。日の当た るところは渋い黒色に変化しています。日の当たらない浴室の壁は焦げ茶色です。これ らは桧でも杉でも、表面をこすってみると、中は元の木の色のままで、いまのところ腐 食している気配はありません。  板張りの屋根でもだいじょうぶのようなので、今度は今冬の粗木酢液を新築した車庫 兼物置の板壁と板屋根に塗る予定です。現在新築中の鶏舎の屋根も野地板を張って粗木 酢液を塗る予定です。屋根に張る野地板は割れないようによく乾燥させてから張る予定 で、雪が降らなくなってから張ります。  粗木酢液が予定通り採取でき始めたので、車庫兼物置の土台や柱にも基礎との間に粗 木酢液を染み込ませた古着を巻いて、下から上へ縦に吸わせています。鹿対策で防除網 を張った杭には浸透させる時間的な余裕がありませんでしたが、鶏舎の金網を支えてい る杭には、杭の頭に粗木酢液の古着を置いて浸透させる計画です。  また、4月頃から借りる計画の水田1反の周辺にも鹿防除網の杭を打ちますが、これ にはあらかじめ粗木酢液を浸透させてから打つつもりです。木の肌や板面に塗るより、 切り口から縦に浸透させた方が効果的であり、自然沈殿したねとねとの木タールでも、 雨戸兼テラスの土台の桧丸太の切り口に塗ったものは、いつのまにか木の内部に浸透し ています。  岸本定吉監修『木酢・炭で減農薬−使い方とつくり方』(農文協刊)はいろいろ参考 にしています。ただ、炭窯で採取した木酢液以外は本物ではないかのように書かれ、タ ール分も歓迎されていませんし、その活用は無視されています。私はもっと優柔不断で、 現実的、総合的に考えたいと思っています。  ここで現実的というのは、現実の生活環境と自分の生活実態に即して応用していくと いう意味です。また、総合的というのは、木酢液や炭は、なにも減農薬のためだけに存 在するのではないという意味です。  木の成分、エネルギーは、つまるところ太陽エネルギーと地球資源によって成立した ものですから、木の成分の1つである木酢液も、物質循環全体のなかで広く見ていこう という意味です。例えば、木を活用する一環として炭なり木酢液をも活用するというこ とです。  同じ岸本氏が会長をつとめる炭やきの会編『環境を守る炭と木酢液』(家の光協会刊) も参考にしていますが、私の場合はいまのところわざわざ炭をやき、その副産物として 木酢液を採取するという方法はとっていません。生活に不可欠な暖房用薪ストーブから 自然に採取できる木酢液などを、必要に応じて存分に活用しています。  これも私独自の1手法であって、これが最善であるとか、硬直した型にはめるべきで はないと思います。いろいろあった方がいいのではないでしょうか。木を最大限に活用 していく一環として、樹皮を堆肥化しているところですが、これには粗木酢液を薄めて かけ始めました。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00025 ◆山猿塾だより◆194 薪ストーブの産物(下) FAGRI掲載日 98/02/13 〈訂正〉前回のたより#24は、#23へのコメントにしたはずが、#22へのコメン トになってしまいました。訂正します。とはいえ、現物は、自分で訂正出来ませんね?  SYSOPさん。 〈前回からのつづき〉  木酢液の農作物への葉面散布はまだ実行していませんが、順次、実験していくつもり です。ただ土間に置いている自慢の山桜の大木で、その防虫効果は実験ずみです。山桜 は皮をつけたまま丸ごと桜の革細工のベンチです。最近、キクイムシが直径1−2mm の小さな穴を開けて木の粉を噴き上げているのを発見しました。  まだキクイムシの実物を捕まえたわけではありませんが、数あるキクイムシのなかで も、ウメやリンゴにもつくウメノキキクイムシではないかと思います。こいつをやっつ けるために注射器を買ってきて粗木酢液を虫穴に注射してやろうと思いましたが、いま どきは麻薬対策のためかどの薬局でも売っていません。  やむなくスポイドを買ってきて粗木酢液を注入しました。針金で虫穴をつつくとたい がいが1cm前後の深さです。その先で曲がっているのかもしれませんが、とりあえず 注入すると、木の粉を噴き上げなくなりました。御臨終のようです。  また、鶏舎は高床式にして2重に野地板を張りましたが、この床にはカンナ屑やオガ クズを敷いて鶏に踏ませ、糞尿の臭気消しに、粗木酢液をかける予定です。小麦が収穫 できれば麦わらを踏ませ、米の籾殻なども踏ませるつもりです。  薪ストーブから出る木灰もばかになりません。昨冬だけで30キロ入り米袋に5杯と れました。畑を始めてから、この木灰は炭が混じったまま主に肥料として活用してきま した。今冬は灰がストーブにたまっただけ、すぐに畑に直行していました。  しかし、古賀綱行『自然農薬で防ぐ病気と害虫』によると、草木灰は肥料以外の効果 も大きいようです。そこで、今年からは野菜などの葉面にもまいてみようと、途中から 蓄え始めました。  8mの煙突を掃除すると、15リッター入りバケツに7−8分目のススが採れます。 粗木酢液をちょうだいするために、生木をあえて蒸し焼きにするためでしょう。年間1 50日、薪ストーブをたくとみて、30日で15リッターなら75リッターのススです からこれもばかになりません。  煙突8mのあいだに付いているススは、場所によってかなり違いがあります。ストー ブに垂直に付いている煙突は、ススというより灰に近いものが薄く付いているだけです。 垂直部分から90度曲がって水平になった部分から、真っ黒の粉のススが、まるで動物 の腸のなかのように凹凸になって付いています。  水平部分ののススも、煙が外気に触れて急に冷却されるところから、木酢液などで湿 っぽくなり、さらに木タールがカーボン状に焦げ付いたようになっています。粉のスス だけなら簡単に落とせますが、カーボン状のものはたたくとパリパリと固まってはがれ ます。  私は質の違うススをわざと一緒に撹拌して活用しています。自宅のコンクリートの布 基礎の内側には、すでに建築当時に籾がらの燻炭を積んでいましたが、布基礎の外側の 地面との境にも煙突から採取したススを積みました。  ムカデなども近寄りにくくなるだけではなく、コンクリートが水分とともにじっくり と吸い上げています。たぶん、カーボン化した木タールの類が水分に溶け、コンクリー トに吸い上げられているのでしょう。基礎に接している土台などの防腐効果をもたらす でしょう。  このススは、山ダニの防除にも効果があります。番犬のゴンには、毎日数十匹を捕っ ても一向に減らないくらい山ダニが付いていました。何百匹もいたにちがいありません。 犬小屋と周辺にバケツ1杯のススをまきました。赤(茶)の柴犬なのに真っ黒になりま したが、山ダニはおそらく100分の1に減ったでしょう。ほとんど見当たらなくなり ました。  昨年は、あたりじゅう山ダニが異常繁殖し、中庭の草や土にもうようよしていました。 そこで中庭にもススをまきました。まもなく寒くなったせいもあるかもしれませんが、 いまのところ山ダニは見かけません。  鶏を飼い始めれば鶏の寄生虫や糞虫でも実験してみようと思います。粉状のススは炭 以上の解毒作用もありますので、病鶏の解毒剤としても使えるでしょう。間伐材を活用 してすてきな自宅を自力建築しましたが、その暮らしでも木を最大限に活用していく計 画です。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00026 ◆山猿塾だより◆195 自然に即した養鶏をめざ FAGRI掲載日 98/02/18 ◇借りた田1反の名付け案を公募します◇  山猿塾登り口の水田1反を借りました。鶏舎が完成次第、ここにもシカ防除網を張る ために間伐材の杭を打ち始めます。春のキャンプでは、ここにトウモロコシ、丹波黒大 豆、大豆、小豆などの種をまける状態にしておきたいと計画中です。  自家野菜はできるだけ自宅周辺に作付けし、借りた田は今後、小麦などの穀物を中心 に作付けしたいと思います。希望者があれば、その一部を区切って自家菜園などに活用 してもらってもいいですよ。  1反のうち3割ほどは湿田同様で、畑作には向きません。作付けするならセリのよう なものしかできませんが、鶏用の雑草を繁茂させられないかと考え中です。それこそド ジョウの飼育も可能ですが、たぶんサギにかなり食われてしまうでしょう。少なくとも 子どもたちが大好きな泥遊びの場にはなるでしょう。  ヤミ小作でもなんでもいいから、減反で耕作放棄されていくような田を農地として1 反でも多く維持していきたいと思います。まずは借りた1反の田に、山猿塾にふさわし い名を付けたいですね。名案、迷案を公募します。名付けてください。 ◇2月中には鶏舎も落成の見通し◇  中島正『自然卵養鶏法』(農文協)を買ってきて読みました。書かれた内容は、ほと んどが私の経験の範囲のことでしたが、いまでもかつての自然な採卵養鶏の伝統が生き 残っていることに感激しました。  かつてのわが家の場合は、孵化が中心で種鶏の飼育も1000羽程度でしたので、よ り自然の原理に徹したものでした。採卵のための養鶏とはちがって、鶏の自然な習性に 反すれば、たちまち受精率や孵化率が下がるからです。  著者の中島氏が実施している点灯はいっさいやりませんし、彼が無用としている運動 場もたっぷりととっていました。柿畑や栗畑が種鶏の運動場であり、鶏舎から運動場に だしてやると、雄鳥はそれを待っていたように雌鳥を追いかけて交尾しました。  かつての経験も生かし、より自然の原理に徹した自然養鶏を追求していきます。30 羽の飼育から始めますが、鶏だけではなく人間であるおのれ自身が自然に即した生活に 徹していなければ、たかが鶏でも自然に即した飼育はできません。  鶏舎はあと晴天が2、3日つづけばおおどころはできる見込みです。遅くとも2月中 には完成するでしょう。3月に入ればいつでも雛を受け入れられるように準備します。 完成間近の鶏舎を見た人たちは「鶏を飼うだけではもったいないような鶏舎やなあ」と いいます。  鶏舎は2m×4mで8平方mしかなく、普通なら成鶏30羽でも少々手狭いです。だ が、日中は雨でも雪でも100坪以上の運動場に飼い放しにしますので、実際には鶏舎 は夜の宿舎となるだけです。  鶏舎は本宅の自力建築の経験も生かし、本宅以上に地元の自然の素材の活用に徹しま した。また、土台や柱、根太、垂木なども私が自分で間伐した桧の丸太です。屋根も板 でふく予定で、鶏が到着するぎりぎりまで乾燥させてからふき、粗木酢液を塗る予定で す。  最初は100日ヒナを入れますが、今後は母鶏による自然孵化で後継鶏を育てていく 計画です。そのため鶏舎は必要によって2室に仕切れるようにしました。ふだんは棚の 上においている産卵箱を床に下ろして、鶏舎で卵を抱かせようと思います。  イタチやネコの来襲を予想し、その対策に手間取りましたが、さまざまな工夫をこら しました。囲いの金網も桧の間伐材で押さえ、さらにイタチや鶏がその下の土を掘れな いように、古瓦を並べました。鶏舎の床も地上から約1mの高床式で、この床下には番 犬のゴンがほぼ常駐して眠っています。  また、床は杉の荒野地ですから、鶏糞の湿気も吸収し、床下も風が吹き抜けますので、 鶏糞はよく乾燥するでしょう。給水は山水を利用し、鶏舎から床下に流し、鶏舎内と鶏 舎の外と両方で水か飲める構造にしました。  運動をさせ粗肥料を与えると産卵率は落ちますが、できるだけ自然に近い飼い方を貫 き、長持ちするようにします。当初は仕入先のこーちんさんの育雛方法や飼料を急激に 換えるとストレスになりますので、順次、自然飼育に移行します。  濃厚肥料の完全配合飼料は逐次減らし、緑餌を中心に自給飼料を増やします。残飯や 野菜屑などは鶏にやり、鶏糞で土に返します。畑以外の農作物の作付けが容易でない崖 などにも鶏糞を入れて雑草を茂らせ、緑餌にします。  家畜の飼料となる農産物の自給率はかぎりなくゼロに近付いていますが、その自給率 も私たちの食糧と同様に次第に向上させていく計画です。なんといっても、いま未利用 の資源、屑米や米ぬかなどを近隣の農家からいただいて、活用するところから始めます。  山猿塾にくる子どもたちにも雑草をつんでもらい、鶏をかわいがってほしいです。四 季折々の季節の雑草は鶏の大好物です。当地でもなにが一番無駄になっているかという と、畑や土手、あぜや空き地などの雑草です。かつては雑草養鶏という手法もありまし たが、完全に配合飼料による濃厚飼育にとってかわりました。  薬剤や添加物などいっさい使わず、健康で生きた有精卵を生ませ、それをおいしくい ただこうと思います。当然、鶏肉もへんな処理はしないで、私が自分で殺して料理し、 自分たちで食べます。いただいた命は骨の髄まで食べます。  地元の日本の木で造った豪華鶏舎ができてくると、1日も早く鶏の顔が見たくなりま した。自然の土を踏み、日光に当たり、風に当たり、自分が産んだ卵を抱いてヒヨコを 孵化させて育て、わが家にくる鶏は日本一の幸せな鶏ではないでしょうか。そんな自然 養鶏をめざします。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00027 ◆山猿塾だより◆196 正面からシカ来襲 FAGRI掲載日 98/02/21 ◇こーちんさんに鶏発注◇  鶏舎はおおどころが完成し、昨夜はこーちんさんに名古屋コーチン30+2羽を発注。 今日は鶏舎の北側の崖からの湧き水と鶏舎に引く山水の排水のため水路づくり。もとも と水田であり、いじくれば泥田同然になり、やむなくコンクリートのU字溝を買ってき て付けました。 ◇正面の林道からテラス下の傾斜畑に◇  排水路造りの土方仕事に夢中になって、早朝の敷地内見回り、観察を怠ったのがまず かった。夕刻になって見回ると、本宅東側の3角畑のナバナ、水菜、大根の葉っぱが一 部、シカに食われていました。  シカの足跡は、林道から本宅前につづく私道わきで、テラス下の斜面の畑を登って3 角畑をかすめ山に消えていました。四方を森林に囲まれた敷地は南北と西側を防御網と 金網で二重に囲っていましたが、シカは進入路をふさがれてついに正面から来襲するよ うになったのです。  敷地の入り口の山猿塾の看板には、街灯を夜中も点灯しているのに、その看板わきか ら堂々とやってくるようになりました。こうなれば本宅周辺も全面を防御網で囲うしか ありません。  とはいえ気付いたのは夕刻。暗がりで、とりあえず脚立を立ててそれに防御網をひっ かけて応急処置をとりました。悪いことはつづくらしく、やれやれと土間に入ると、今 度は薪ストーブの煙突が完全なスス詰まりで、煙を逆に噴き出し始めました。  冷え込み始め、夕食後にいまからでも煙突掃除にかかろうかと思ったものの、それに は脚立が必要。その脚立はいまシカ対策の応急処置で使ったばかりです。防御網をはず して煙突掃除に脚立を使い、また応急対策をやり直す勇気はなく、寒いのは我慢です。  ここ3、4日、煙突から木酢液が順調に落ち、もっとほしい、もっとほしいと欲の皮 が突っ張った結果でした。でも、いつかNackさんにいただいた炭があったことに気 付き、今夜は炭火が頼りです。Nackさん、ありがとう。  北風が山から吹き下ろし始めました。今夜はまちがいツノュ氷点下になるでしょう。さ て、明日は何度目かのシカ対策。といきたいが、まずは煙突掃除。午後からは集落の川 の土手焼きの日役があります。  それにしても、正面をふさぐとなると、門でも造らなければならなくなります。とな ると、新聞配達よりも早起きして門を開けるという手間が必要になります。そんな門な んてゴメンこうむりたいのだが、ならばどうしたらよいか。またまたシカに悩まされる の巻です。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00029 ◆山猿塾だより◆197 浅知恵&マイペース FAGRI掲載日 98/02/25 ◇もっと根本的な対応があるはずなのに◇ サナギマンさん(#28)  3月下旬、つまり学校の春休み中にきてくれるのですね。私も楽しみです。とくにサ ナギマンさんの3姉妹が、山猿塾の変化にどう対応するか見物(みもの)です。  前回は確か冬休みのはじめでしたね。そのときもあちこちに作物を作付けして、3姉 妹の行動範囲を窮屈にしました。その後の変化はさらに急速です。3月下旬までにはさ らに変わるでしょう。  結局、自宅周辺もシカの防御網で囲い、入り口の看板のそばも移動式の防御網を作り、 シカが林道からも侵入してこないようにしました。もっと根本的な対応があるはずなの に、人間の浅知恵を痛感しながら、目先のシカ対策に追われました。  しかし、少しずつでも間伐し、シカも喜ぶ下草が近隣の山にも生えてくることでしょ う。山猿塾への登り口の林道わきの現地事務局さん所有の桧林も、私が200本以上、 間伐、搬出しましたので、すっきりしました。  さらに下の、山猿塾への登り口の農道の上の、借りる農地でも、そのころには農作業 にかかっているはずですから、変化の範囲もひろがっているでしょう。日曜日の22日 には留守中に創作住宅の見学者もきましたが、集落の川の土手焼きの日役にも出ました。 こういう機会を通じ、地元の農家との接触もひろがりつつあります。 ◇平常心の〈書き込みラッシュ〉◇  自宅の自力建築が完成してから、私の行動、活動の範囲もひろがりつつあります。F AGRIの再編成で、有機農業や林業の会議室の書き込みも読むようになり、それぞれ 書き込みたいことがありますが、それらの書き込みはセーブし、できるだけこの会議室 に集約的に書き込んでいく計画です。  サナギマンさんも〈最近の書き込みラッシュはすごいですね〉と書いていますが、N ackさんにも同じようにいわれたことがあります。だが、私にとっては平常心であり、 計画通りのマイペースです。今回はこの点での私の計画、ペースについて書いておきた いと思います。  私の残る半生の目標は、農林業に限らず、産業全体と人間生活のあり方を、自然の物 質循環に適応した資源永続型に変革していくことです。まず自ら全面的にそういう暮ら し(生産も消費も)のあり方の可能性を実証する実物見本を創り出していくことです。  ジャーナリストとしては、その実地体験そのものが取材であり、その実証結果を発信 していこうと思っています。だから、コメントをまったくいただかなくても、私の仕事 として、マイペースでその取材ノート代わりの書き込みをつづけるつもりです。  還暦で自宅を自力で建ててみて痛感したのは、「この年になってからでも、やればで きるものだなあ」ということです。住宅の建築に限らず、自分という人間にもさまざま な能力が潜在していて、その全知全能を最大限に発揮して生きていくことが、最も自然 で、人間らしいのではないか、ということでした。  それは長年の企業社会の取材で感じていたことを、自ら実証したものでした。つまり 人間は狭い市場原理で目先のカネになる能力だけを買われているが、人間にはもっと豊 かな能力があるはずだと思っていました。  これからは産業や生活の転換とともに、人間性の全面的な復活、ルネッサンスの時代 ではないかと思っています。少なくとも、私は自分の暮らしと山猿塾の活動を通して、 最大限に自分の能力を発揮していきたいと思っています。  地元、兵庫県には丹波芸術家村構想というのがあり、丹波の芸術家のネットワークづ くりが始まっています。私にもお声がかかっていますが、行政や政党、政治から自立し た、芸術家の自主的なネットワークにするため、私もかかわっていきます。  人間の認識は浅知恵で、その片々しか見えないでいますが、自然はもっと雄大で総体 的なものです。人間自体がそうです。生物資源を活用する農林業も、本来は自然と人間 に対応した多面的、多角的で総合的なものであり、まさに百姓です。  しかも、農林業は本質的には中核産業ですから、他の産業や人間生活の総体を視野に 入れた、百姓をめざすべきです。そういう総体的な実験を山猿塾で試みていこうという わけですから、林業などそれぞれの分野の会議室に分解して書き込むのは至難です。私 のなかでもそれら全体が一体のものだからです。  建築・デザイン関係のFARCDを含めて、関係する部門別に書き分けようかと迷っ たときもありました。が、以上のようなわけで、これからもこの会議室にいろんな分野 のことをごっちゃに書き込ませてもらいます。  私の書き込みはハイペースに見えるでしょうが、これは平常以下です。コンピュータ ー病で苦しむまでは、年間2冊程度の単行本を書いていました。取材ノートはその10 倍以上であり、実際に発表した単行本と陰に隠れていた取材ノートの文字数は、月間で も単行本2冊分に相当していたでしょう。  現在はまだコンピューター病の自己治療中で自制しており、平常のせいぜい4分の1 くらいではないかと思います。このたよりも、昼間は野外で目一杯働いてから、夜にな って1回分を1時間前後で書いています。今後は本業だけではなく、第三種兼業農家と して生きていきますので、せめてかつての2分の1くらいの文字くらいは書けるように なりたいと思っています。  書くのは私の本業ですから、会社勤めや別に仕事を持っている人たちが、私の書くペ ースに合わせるのは無理だと思います。だから、私は私のペース、みなさんそれぞれが マイペースで書き込んでお付き合いいただくのが、お互いに最も好都合なペースだと思 っています。私も遠慮なくマイペースで書けます。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00032 ◆山猿塾だより◆198 自給野菜の味と効率 FAGRI掲載日 98/03/06 ◇梅は満開、冬野菜にも花茎◇  サナギマン果樹園の梅が満開です。ほとんど買わずに自給自足してきた冬野菜の花茎 が急に伸び始めました。それがうまいのに驚いています。自分が汗して作ったせいもあ るでしょうが、それだけではなさそうです。  崖のササの切り株のあいだに定植していたナバナが食べごろになりました。ここのナ バナは地中から湧き出している山水から養分をとったのではないでしょうか。食糧とし ている花茎だけではなく、菜っぱもうまく、おしたしにしても味噌汁の具にしてもおい しいです。  白菜は肥料不足で結球しませんでしたが、自然にまかせていました。花茎が伸び始め ましたが、こんなうまい白菜を食べたことがありません。市場の白菜は白いところが多 く水っぽいですが、わが家の白菜は湯に通したり煮たりすると、濃厚な緑色に変わります。  この点は、チンゲンサイやナバナなどのほかのわが家の野菜すべてに共通しています。 畑や崖で精一杯に生きていたときは、肥料不足で白っぽく見えていたのに、料理すると 濃厚なみどりに変貌します。そして、柔らかくうまいのです。とくにカラシ菜のみどり は濃厚です。  どう表現したらよいのか、味も濃厚です。京水菜は特有の苦みとあくが強く、白菜で もそうです。苦みやあくというとまずそうに聞こえますので、それぞれの野菜本来の味 といった方がいいのかもしれません。大根は辛みがあります。  そういえば、不耕起栽培の白大豆の枝豆も、粒は小さくても濃厚でした。丹波黒大豆 も、近隣の農家のものより小粒ですが、煮豆にしてもあくが多く、食べるとうまいので す。野菜なども発育が悪く商品としては売れそうもないのに、食べればなぜかうまいの です。女房といつも不思議がっています。  農薬、化学肥料はもちろんやっていませんし、マルチも敷かずトンネル栽培もしたこ とがありません。肥料はオガクズや樹皮の堆肥、木灰だけです。崖のナバナやチンゲン サイにはそれさえやらない不耕起栽培でした。  総じて肥満児ではなくやせ形の作物になりましたが、あまり肥料をやらない方が、野 菜本来のうま味がでるのではないかとさえ思えます。鶏舎を建てて山水が流れる竹の水 入れを造ってわかったのですが、青だけの白い水路には細かな有機物がたまります。山 の落ち葉などの有機物が野菜をおいしくしているのではないかと思います。  鶏舎の山水はひまわり小屋の炊事用のホースから延長したものですが、敷地内ではい たるところで流れ込み湧き出しています。かつて水田だったころの元の所有者によると、 水はどんどん下へ抜けるがその分は上から下りてくるということでした。森林が水を育 み、水とともに山の養分を運んでくれているのです。作物の味もミネラル一杯というの が実感です。 ◇効率的で合理的な自家野菜◇  肥料食いの白菜などは確かに小型ですが、できは小さくても資源の利用という点では、 自家野菜の栽培は極めて効果的です。なにしろまびき菜から食べ始めて、旬に食べ残し ても花茎までおしいく食べられるからです。  ブロッコリーは花茎を2度ならず3度も採れそうです。キャベツやグリーンボールも、 結球したぶんだけ採り根と外葉を残しておくと新芽が出てきます。残した水菜の根から も新芽が出ます。これは食べられるほどに成長するかどうか観察中です。  もともと人間の食糧としてではなく、まもなくくるはずの鶏の餌として残していたも のです。ところが、鶏の到着の予定が変わってしまいました。鶏舎を2月中に完成し、 こーちんさんの名古屋コーチンを3月のできるだけ早い時期にと発注していましたが、 輸送方法がなどが不確実でありキャンセルしました。  結局、地元の市島町内の平飼いの養鶏家グループに相談し、グループの予約発注に便 乗させてもらいました。そのため鶏の到着は大幅に遅れ、ゴールデンウィークの前後に なります。春のキャンプ山猿塾には間にあってほしいと願っています。  いずれにしても、農作物を商品生産で市場に出すのとは大違いで、自給自足は資源効 率が高いものです。このうえ鶏が到着すれば、食べ残しも食べてくれますからいっそう 効率的になります。この点では鶏のほかになにか草食動物を飼えば、資源効率はいっそ う高まるのに……と思案中です。 ◇元開拓農民の農具を◇  82歳になる元開拓農民の義兄が亡くなり、夫婦二人だけでは食べきれなかったナバ ナの花茎をケースに詰め込んで仏前に供えました。義兄は、戦後まもない食糧増産政策 の時代に、赤貧に耐えて水田を拓きましたが、長男は家を出てサラリーマンになり、後 継者はいません。義兄は一代限りの百姓であり、わが家の山岳農業のナバナを供えるの がふさわしいかったでしょう。  使わないで鉄柱がさびた牛舎や納屋には、やはり使い手のいない農具が放置されてい ます。「汗をかく農業」に向いている、人力で動く唐箕や脱穀機などの農業機械や農具 は、そのうちに私が譲り受けようと思っています。生前はけんかばかりしていましたが、 せめて農具だけでも引き継ぎ手がいれば喜ぶでしょう。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00033 ◆山猿塾だより◆199 増えてきた読者見学 FAGRI掲載日 98/03/07 ◇毎週のように読者の見学予約◇  雪が積もる心配が少なくなったからでしょうか。わが家「創作住宅」の見学者が増え てきました。拙著『やったぜ! わが家を自力建築−毒漬け住宅に住めるか』には「読 者見学予約カード」を挟み込んでいます。すでに生活と仕事の場になっていますので、 見学日も日曜、月曜の午後2時からに限定させてもらっています。  3月に入ってからは毎週、見学予約があります。今週は兵庫県西脇市内の高校の教師 が4人連れでやってきました。予約カードにはつぎのように記されていました。 〈昨年自宅を建て替えてもらって以来建築に興味を持つようになりました。そして自分 が納得する家を建てるには、自分で建てるのが一番と思うようになりました。全てを自 力で行われた貴兄には敬意を感じています〉  住宅メーカーを中心とした住宅産業は逆立ちしており、住み手のことより自社の財布 を優先しており、住み手の心から離れていく一方です。見学にきた読者は、拙著を熟読 していてくれ、見学の帰りにはクスノキの古木の一部を譲りました。私と同じようにク スノキをチェーンソーでくだき、卵白のりで隙間をふさぐつもりです。  4人づれのうちもう一人は、すでに自力建築を計画中で、いつから始めるか、その時 期を考えているところでした。4人のほか今回は都合が悪かった教師がもう一人いて、 またきたいそうです。  来週は、大阪府藤井寺市のタイル業を営む夫婦と千葉県船橋市の元経営コンサルタン トとその親友が見学にくる予定です。藤井寺市の読者の予約カードには書かれていまし た。 〈私達は今、奈良県N村に小さな求め、杉の木を伐り根を起こし開拓の真似事をしてい ます。家も手作りで建ててみようと考えてます〉  こういう自力建築の希望者が予想以上に多いのに驚いています。すでにこういう読者 がきて、何人かが実際に事を始めています。最初2×4で建てる予定だった陶芸家は、 2度見学にきましたが、奥さんが間伐材の皮のはぎ方を電話で聞いてきましたので、わ が家の方式に変更したようです。  船橋の読者はアメリカの大学の出身で、長文の手紙とともに予約カードを同封してき ました。彼の場合は自力建築が直接の目的ではなく、手紙にはつぎのように書いていま した。 〈私は、以前から日本社会に対する数々の疑問を抱きながら考えを巡らし、そのために 自分はどうするべきかを模索し続けました〉〈今回、御著書を拝見して痛烈に感じたこ とは、青木様が問題の告発というジャーナリズム活動だけではなく、問題の解決に向け て我々個人が実際にできることを示していただいたことです〉〈私自身、実際に創作住 宅を拝見することにより、自分の将来に対する考えと実行へのさらなるステップを踏み しめたいと希望しています〉  まだ28歳ですが、経営コンサルタントをしていた会社をやめ現在転職中で、生き方 の転換を模索しているようです。  再来週には、神戸から41歳の見習い大工が3、4人で見学にくる予約になっていま す。彼も予約カードにつぎのように書いています。 〈大変面白く読ませていただきました。間伐材の利用には興味を持っていましたが、製 材しなければ、木の肌が強いという事には気がつきませんでした。自分の手で木の家を 作りたくて大工の勉強1年目です〉  彼も中年になってから転身し、大工の見習いになったようです。読者の手紙や予約カ ードの書き込みを読みながら、やはり時代の転換期を痛感しています。また、私の創作 住宅が、見学した人々の決断と実行に、それなりに役立っているようです。うれしいこ とです。  拙著の読者ではない、近隣の人たちの見学、見物もつづいています。最初は都会から 山奥に引っ越してきて自分で家を建てている変人がいる、という第一印象を与えていた ようです。だが、山猿塾と私たちのことは新聞などですでに20数回、紹介されていま すし、変人の奇行ではなく、意義ある仕事として市民権を得たといえます。  先日は隣の集落から二人の女性が見物にきました。「ここのことをよく聞かれますが 説明できないので、一度見せてもらいたい」と、その理由をいいました。地元の集落の 見物人も同じようにいっていました。これも最近の傾向です。 (これまで、創作住宅については建築・デザイン関係のFARCDに記録を書いてきま したが、これについても、今後はこの会議室で書き込ませてもらいます) 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 00035 ◆山猿塾だより◆200 春まき野菜の準備 FAGRI掲載日 98/03/09 ◇ようやくテレビも見る気に◇  毎日、働きまくっていますが、当地に移住してから4月26日でまる3年になります。 女房も「テレビくらい見られるようにしようよ」といいます。この3年間、テレビなし でした。私もジャーナリストとして、世間離れしすぎてはまずいです。  テレビは引っ越し以来、梱包されたままビニールハウスで眠っていました。使えるか どうかわかりませんが、女房が荷をほどいて掃除しました。見た感じでは使えそうです。 でも、地上テレビの電波は東側の山が障害になって映りません。  電気工事屋に見積もりしてもらいましたが、林道を約100m下ったところにアンテ ナを立てないと見えません。それだけで12万円もかかってしまいます。他人の山林を 通過する許可をえるのも面倒で、伐採の際には邪魔になり、補修もたいへんそうです。 それならばと、CSのPerfect TVを契約します。山猿塾でもテレビが映るよ (けた違いの時代遅れ)。 ◇たよりも200回です◇  この「たより」も、今回で区切りのよい200回になりました。実際の暮らしもそろ そろ区切りを付けます。これまでは自宅や車庫、鶏舎などの建築が主な仕事で、いうな ら設備投資とその工事に追われてきました。最小限必要な設備は整ったので、これから は農作業、山仕事に比重を移していきます。  薪ストーブの燃料が底をついて間伐や搬出に追われていましたが、この冬の分はもう 間に合います。このさい、つぎの冬の薪も備蓄しようとしていましたが、間伐、搬出は 一時中止です。仕入れた春まき野菜十数種の種をまく準備が遅れ気味で、この方が先決 です。このままではせっかくの自給自足もブランクができてしまいます。 ◇畑の準備と簡略な温床づくり◇  小麦もシカに何度も食われながら、このところ急に成長しはじめました。15−20 センチに伸び、シカに食われたあとも目立たなくなってきました。万一に備えて、余っ た小麦の種を移植用の苗としてまいていましたが、借りた田圃がうまく耕せれば、たと え少しでもそこに移植します。  まず自宅周辺の畑から準備を始めました。自宅東側の三角形の畑に樹皮とオガクズ、 生ゴミで造った完熟しきらない堆肥を入れて耕しました。タヌキの餌場の堆肥にはカブ トムシの幼虫が数えるほどしかいなかったのに、耕した畑にはごろごろといて驚きまし た。昨年入れていた樹皮とオガクズの堆肥で育ったようです。  テラス下の畑では、とうがたちはじめた白菜をめざして、小鳥(なんだろう)がやっ てくるようになりました。花が咲き始めるころがうまいのを知っているようです。早く 食べてしまってここも耕したいのですが、白菜や水菜、グリーンボールも残っています。 崖のナバナも残っています。  ひまわり小屋と開拓小屋の南側崖のそばの開墾を始め、開墾が終わったところに簡略 な温床を造りました。前の家の書庫で使っていた合板で四方を囲み、ガラス戸の木枠に ビニールをセロテープではったものをのせるだけのものです。経費はゼロに近く半日で 完成しました。  見学者が「これはいい、私も造ろう」といっていました。まずはサツマイモを4個だ け入れ、籾殻がないのでチェーンソーのオガクズをかけました。早めに苗を植え、その 苗が付いて伸びたら、そのつるからも苗を採って種芋も節約するつもりです。  サツマイモはつるや葉も鶏の餌になるので、多めに作るつもりです。温室育ちの苗は 原則としてつくらない方針ですが、ものによってこの温床を活用します。 ◇借りた水田の活用◇ サナギマンさん(#34)  私たちもあかぼしさんのサトイモはおいしくて大好きです。期待しています。今後は、 穀類やイモなどは、借りた登り口の田圃で作り、日常的に収穫して使うネギなどの野菜 を中心に敷地内で作ったらどうかと思っています。  とくに今年は敷地内いたるところに小麦をまいてしまいましたが、日常的な観察、見 回りがそう必要ではありません(シカの食害の監視は別にして)。いかがでしょうか。 まずは田圃を実際に見てから判断してください。  借りた田圃は、所有者が「わしが鋤いたげます」といってくれています。それに甘え ようと思います。地力増進(1年間の休耕)のあとですが、根菜類などの当地の固い土 での不耕起栽培にはむかないものも、借りた田がいいと思います。  なお、3月29日は義兄の法事がありますので、創作住宅見学も休ませていただきま す。この日にサナギマンさんがこられる予定になったら、午前中でしたら借り田へ案内 できます。問題は他力本願なのでそれまでに耕せるかどうかです。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ