山猿塾だより 丹波山猿塾だより 丹波山猿塾だよりバックナンバー

ここは、丹波市島で山猿塾を主宰する青木慧さんからの便りのコーナーです。


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◆山猿塾だより◆151-私の方針 FAGRI掲載日 97/09/17 ◆山猿塾だより◆152-収穫祭いいですね FAGRI掲載日 97/09/18 ◆山猿塾だより◆153-言い訳と質問 FAGRI掲載日 97/09/18 ◆山猿塾だより◆154-子連れもどうぞ FAGRI掲載日 97/09/19 ◆山猿塾だより◆155-横着自給計画 FAGRI掲載日 97/09/23 ◆山猿塾だより◆156-小麦の種子と製粉機 FAGRI掲載日 97/09/25 ◆山猿塾だより◆157-見付かった製粉所 FAGRI掲載日 97/09/28 ◆山猿塾だより◆158-キャンプ準備と2期工FAGRI掲載日 97/10/04 ◆山猿塾だより◆159-キャンプ食糧他 FAGRI掲載日 97/10/06 ◆山猿塾だより◆160-間に合う新刊見本 FAGRI掲載日 97/10/09

Contents Copyright 1996,97 Satoshi Aoki

11248 ◆山猿塾だより◆151-私の方針 FAGRI掲載日 97/09/17 ◇親の責任を果たして社会の責任を問え◇  町内の幼稚園・保育園の保母たちの団体の会長である校長が講演を依頼にきたさい、 ベッタリ母親と軟弱親父のことをけなしました。校長は「そういうことをはっきりいう 人がいはったら助かります」といっていました。彼らもよほど親をもてあましているの でしょう。ただ、それを自分で口にするとクビが危ないというわけです。  子どもたちの歪みを口にすると、すぐ「戦後の民主教育が……」と管理教育強化とす りかえる連中がいます。私は逆に民主教育の不徹底こそが問題だと思っています。なに よりベッタリ母親と軟弱親父は幼い子どもにも独立した人格があるとことを忘れ、親の 方が子どもから自立していません。  だから、子どもの付属物みたいに振り回され、口先だけうるさい「子どもの召使い」 になり下がっている。おまけに他人まで自分の子どもの召使いにしようとする。小学校 の入学式さえ、親もとめないので新入生が走り回り、まともに成立しないらしい。校長 やTさんの牧場の話などに比べたら、山猿塾はそこまではいっていません。  山猿塾がそこまで落ちていないのは、情けない自慢だが、「頑固爺」がベッタリ母親 と軟弱親父に抵抗してきたからではないかと自負しています。わが家では、子どもに振 り回されている親の無責任は跳ね返し、親の責任を問う方針です。 ◇親の責任を問う◇  中3の過保護息子が登校拒否になって、山猿塾にあずかってほしいといった無責任母 親。23歳にもなった過保護息子が出社拒否症になり、あずかってくれというベッタリ 母親。しかも、軟弱親父がクルマに乗せて運んでやらないと行けないという。  某国立大を卒業させ某新聞社に合格できなかった息子をクルマに乗せてやってきたベ ッタリ母親は、私がジャーナリストだというので「山猿塾では文章の書き方も教えてく れるんですか」と聞いた。私は「文章なんか自分で覚えるものだ」といった。  今夏は女房もいい体験をしました。東京の古い友人から何十年ぶりかに突然、電話が あり、まだ見たことも会ったこともない高校生の娘を、1週間あずかってほしい、自分 は1週間後に行くという話でした。女房も友情からしぶしぶ引き受けました。  1週間も未成年をあずかって、いったい責任を持てるのか。私は「無理だ」といった。 女房もわかって友人に「娘さんよりせめて2、3日あとにこれないか」と低調に電話し ました。相手は「それでは意味がない」といい、中止になりました。  娘の自立のために一人旅のホームステイをわが家でやらせる魂胆のようでした。母親 が勝手に自分の娘の旅に付けた「意味」を、なんで私たちがありがたがらなければいけ ないのか。そんな「意味」を他人にまで押し付けることこそ、娘の自立のじゃまになる。 そもそもこっちは、ホームステイなどやる気もなければやってもいません。  こういう親は、自分の子どものために地球が回っているとでも思っているのだろうか。 こんな親の責任を下手に代行すると疲れるばかりであり、疲れると投げ出したくなって しまいます。といって、こういう人間社会から逃げ出すわけにもいきません。  このところずっと考えつづけてきましたが、母性や父性そのもが歪み、生物の一種で ある生きた人間本来の生存本能も退化しつつあるのではないかと疑い始めました。露骨 に怒りを書きましたが、よく考えてみると、彼らこそ山猿塾で自然に接し自然から学び 直してほしい人たちです。  また、自然から学び直し自然の原理に即して生きていくという、私の残る半生の大き なテーマの柱にもなるものです。建設資金が足らずに自力で創作住宅を建て、それ自体 が私の実地体験取材だったのと同じで、もてあましてきただめ親父とべったり母親と正 面対決し、これをも本業の仕事にしてしまおうかと思い始めました。  最近のこの「たより」の一連の書き込みは、おおげさにいうと、だめ親たちと正面対 決する私のいわば「闘争宣言」です。親の責任は下手に代行しないで、親の責任を跳ね 返しつつ、やはり「いつでも、だれで、どうぞ」に徹していく方針です。  いじけたベッタリ母親と軟弱親父め! この頑固爺と対決してみろ。野生の小鳥たち の巣だちの弟子になってはどうか。マムシの生命力にさずかってみてはどうか。野菜た ちも雑草の生命力と競っている。ただし「ケガと弁当は自分持ち」ということを忘れる な。というわけです。  Tさんは自分が告訴された経験から「マムシにかまれたら訴えられますよ」と心配し ていました。マムシには人間の法律は通用しません。また、私もマムシを飼育し管理し ているわけではなく、からだをはって生け捕りにしています。 ◇自宅・創作住宅の子どもへの開放中止◇  山猿塾にはベッタリ母親に軟弱親父も歓迎したいがために、私生活と仕事場である創 作住宅の開放は、とくに子どもに厳しくつぎのように制限させてもらいます。一口にい えば「子どもは『風の子』であり、外で風に吹かれよ」という対応です。 1)子どもと親子づれの土間と各室の利用はお断り(外トイレは別。また、参加者以外 の所用のある一時的な訪問の子どもと親子は別)。 2)大人だけの場合は(親子は親だけ)支障のない範囲で従来どおり土間を利用し、別 室の利用も必要なら相談してください。 3)創作住宅の見学、見物は、子どもと親子づれも、頑固爺が都合がつくときに案内さ せてもらいます。何回でもいい。 4)子どもが使う必要な文具、道具で物置にないものは持参してください。 5)キャンプ山猿塾などの行事で必要な場合は、親の責任の代行が不要かどうか判断し たうえ、子どもへの開放中止を緩和していきます。  これは私たちの自宅を私たちが管理する方針であり、ひまわり小屋、開拓小屋などは、 当然、従来通り参加者の自主管理でお願いします。いうまでもありませんが、キャンプ 山猿塾や参加者の自主管理の行事も、子どもだけでも親子づれでも、参加者の自主管理 で責任を持ってください。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11263 ◆山猿塾だより◆152-収穫祭いいですね FAGRI掲載日 97/09/18 Nackさん(#11231)  一番大事なことを後回しにしてすみません。思っていたことを一気に書いておきたか ったもので……。途中で腕が物言いを付け痛み始め、ちょっと一服していて遅れました。  97秋キャンプ山猿塾は収穫祭。いいですね。イモや豆などの都合を聞きました。返 答はいろいろです。イモ類は若干の期間の余裕がありますが、急いだ方がよいものやあ わてない方がいいものもあります。多数決をとると11月1−3日です。  早生の小粒大豆はいまが食べ頃で、あまりおいておくと黄色く固くなってしまいます。 ライスカレーや味噌汁にまで入れて、懸命に消化しつつあります。  黒大豆も11月では枝豆用にはかなり固くなりすぎるかもしれません。でも、成熟さ せて収穫するなら適期になるでしょう。つまみや豆御飯に使えます。かなりの収穫が期 待でき、倉が建つのじゃないかと夢を見ています。  小豆も一部サヤが変色し始めました。総じて11月までもつと思います。落花生はよ くわかりませんが……、いいんじゃないでしょうか。ミニトマトも実を付けています。 キュウリやナス、シシトウはもたないでしょう。  人参、大根がけっこうできていますが、これはわが家が収穫してしまいそうです。見 本か会食用くらいは残しておきます。ネギも一人前になりつつあります。  サナギマン果樹のフユガキは2個健在です。一人頭何グラムか口に入るかもしれませ ん。スダチも2個です。焼き魚に付ける程度なら間に合うでしょう。作者と相談してく ださい。  このほか接ぎ木もしていないのに栗が立派な実を付け、今日10個拾いましたが、ま だ4倍くらい残っています。店頭の銀寄に負けません。これも私たちに消化されてしま うでしょう。椎茸を収穫し始めました。これは収穫でき会食に使えるでしょう。  みなさんにぜひ横着栽培の味をあじわってほしいと思っています。むろん無農薬、無 化学肥料です。こんなに簡単にできちゃっていいのか、だれに感謝したらいいのか。戸 惑っています。女房も「こんなに早くいろんなものが自給できるとは思わなかった」と 喜んでいます。  これは食べる人はいないと思いますが、コスモスが咲き始めました。まもなく満開で す。ちょっとのちかいで、すぐ下の集落より1週間以上遅いです。山猿塾もそれらしく 豊かな実りの秋を迎えました。参加のみなさんとともに、収穫を大いに祝いたいです。 Nackさん、お世話をよろしくお願いします。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11264 ◆山猿塾だより◆153-言い訳と質問 FAGRI掲載日 97/09/18 ◇悪例ばかりではありまん◇  一連の書き込みでは悪例ばかりあげました。誤解を与えますので、全体とのかかわり を書き加えます。  私としては「いつでも、だれでも、どうぞ」で歓迎し、だれでも「おまかせ」で自由 にしてほしいのですが、それができない悪例を書きました。悪例が何割かあると、みな さんに「おまかせ」にできないから悩んできました。  逆に、だれでもいつでも「おまかせ」にしたくても、なにをしていいかわからない例、 遠慮深すぎて自由にできない例もあります。だが、今回は、悪例^の対応、これからは 私なりの方針を持って歓迎するという結論にいたるまでの過程を書きました。 ◇塾も飯の種になるとたいへん◇ 芝田まことさん(#11225、35)  山猿塾は名が塾でも先生もいるわけではなく、人がこなくても家計に響くわけでもな く、その意味では気楽です。塾を「飯の種」にすると、たいへんさは質がかわってしま うと思います。だから、私も完全ボランティアに徹したいのです。  そこで質問ですが、しかると生徒が減るというのは、生徒がきたがらなくなるからで すか。あるいは親が塾を鞍替えさせるのでしょうか。そこらへんは推測になるでしょう が、親子のどちらが主導か知りたいところです。  山猿塾では、私が怒鳴りつけてこなくなった例は、不思議にありません。私が知らな いたせけかもしれません。むしろ子どもの側に、ときには手厳しい対応を大人に期待し ている傾向すら感じます。  自宅の住まいの一角が仕事場になっている場合、やはり家族全体の認識、公認を獲得 するだけでもかなりの時間と労力が必要ですね。夫婦、親子などの家族関係からんでき ます。私は狭い団地暮らしのときから、机に向かえば騒がないという家族の環境だけは 確保できました。  しかし、家族だけではなく、他人がこれに加わるとそうはいきません。でも、これに も家族間の認識が一致していないと、対応の仕方がありませんね。がんばってください、 としかいえません。 ◇常駐はわが家だけなので◇ サナギマンさん(#11244)  山猿塾では悪例の場合も悪意があるわけではないです。常識の範囲がかなり落差があ るという程度かもしれません。はじめてで知らないという部分もかなりあると思います。 また広い意味での社会的な風潮も反映されているでしょう。  また、私がそれに押し流されることのできない頑固者という、私の側の性格、信念な どもあると思います。いろいろあっていいんですが、これは大部分が私の生き方にかか わるもので、これを貫こうしているところからくる軋轢もあると思います。  山猿塾には私たち夫婦しか常駐していないので、わが家が玄関になるのはいたし方な いとは思っています。そして、いまの初顔は、たいがいが山猿塾というより創作住宅を 見にくるというケースです。  創作住宅の記録が単行本になると、このケースがいっそう増えると思います。だから、 出版社に頼んで見学予約カードみたいなものを、単行本に織り込んでもらおうかと考え ているところです。  山猿塾への参加希望の場合は、サナギマンさんの提案が効果があると思います。が、 ひまわり小屋で山猿塾のことを理解してもらえる状態にまでするには、かなりの手間と 労力が必要ですね。  せっかくのガイドブックも読んでくれる人も限られ、いまはわざわざ出てきてまで物 を読むだけで納得する人いるかどうか。字を読みたがらなくなっていますので、Nac kさんが作ってくれたアルバムは効果的だと思います。まずはNackさんにがんばっ てもらって、アルバムの補修をお世話になりましょう。  また、山猿塾を訪ねる場合も、私の話を聞きたいというケースが多いので、すぐひま わり小屋へ案内するというふうにはなかなかいきません。とくに拙著の読者が著者の私 を目当てに訪ねてくれる場合は、だれも代行できないので、私が対応するほかありませ ん。解決策は金にもならない本をあまり出さないことかな? ◇宴会参加は歓迎ですよ◇ COREさん(#11251)  応援歌ありがとう。キャンプはなにより交流の場ですから、〈夜の参加〉宴会専門の 参加も大歓迎ですよ。〈参加率〉なんて山猿塾にあったかなあ?という感じです。  看板「自分の責任で」というのはいいですね。日本中に立てたいだすね。なにより日 本人の腹のなかに立てたいです。 ◇梨園開放の聞きたいところ◇ yasufumiさん(#11252)  梨園開放の経験をありがとう。聞きたいこと質問がいっぱいです。  御家族が反対の理由はなんでしょう。反対でも一人でできるのでしょうか。  梨園の開放には、自宅の住まいの部分も含まれているのでしょうか。  含まれているとすると、反対の御家族の対応はどうなるのでしょうか。  〈フリー客も入れていたのですがやはり問題が多い〉とのことですが、どういう問題 だったのですか。  私たちは〈いつでも、だれでも、どうぞ〉が基本姿勢ですが、〈完全予約制〉への移 行のプロセスが知りたいところです。フリー客も受け入れた方が〈農業の現場を見ても らいたいという思い〉が、より多くの人に伝わるのではないかと思えますが。  それに、自作のパンフレットの内容を知りたいなあ。  私の場合は、正直いって町と村の〈生活論理〉のチャンポンです。正確にいうと自分 が納得できる私独自の〈生活論理〉です。当地は農山村ですが、みなさんはわが家より よほどプライバシーを固く守っています。  昼間はみんな勤めや登校していて留守であり、「いつでも、だれで、どうぞ」と1日 中開放しているわが家のように、見知らぬ人まで自宅に招く家はありません。なにより、 わが家のように来客が多い農家はありません。  近所同士とか、よほど親しくないと、たいがいが玄関までで、玄関払いです。都市と 変わらない〈生活論理〉になっています。そして、私はそれでいいと思っていますし、 都市や田舎に限らず、訪ねる側は訪ねた人の〈生活論理〉を乱さないのが礼儀だと思っ ています。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11281 ◆山猿塾だより◆154-子連れもどうぞ FAGRI掲載日 97/09/19 HALL OF SHAMEさん(#11255)  清里あたりの観光農園なら、山猿塾どころではなく、いろんなお客さんがみえるでし ょうね。いい意味で、すてきな少年の「親の顔が見たい」です。 芝田まことさん(#11265)  やはり親が鞍替えさせるのですか。むかしは他人が子どもをしかってくれたら親が感 謝したものてすが、世をあげて大甘ちゃん競争をやっているみたい。  私ならこんなのには付いて行かないです。憎まれ、嫌われ、評判を落とす方がましで す。世の中がそうなら、ますますがんがん自己流でやってしまいます。  だが、これは経済的にも生活上でも、あまりおすすめできる〈良い方法〉といえそう もありません。私は生活上も開き直っていますが……。 Nackさん(#11269)  また、仕事が増えました。台風の余波で山水が止まってしまいました。いずれスギヒ ラタケとマムシを見付けるために、また沢を登ってみようとは思っています。ゴミ詰ま り程度だとすぐ直せますが……。 JP3KVNさん(#11272)  ぜひおいでください。〈子連れ〉を追放しようというわけではありません。わかって いただいて幸いです。なぜか山猿塾は女の子が多いです。  Nackさんが案内してくれている97秋キャンプ山猿塾の期間がよい機会です。都 合がつかなかったり、静かなのが好みなら、別の日でもかまいません。 さてふのつまさん(#11278)  痛烈です。見えるようです。〈大雑把な自然を見ながら〉なんてのは、生活がある農 家を観光屋と勘違いしている、都会の「自然愛好家」にありがちな眼差しですね。わか る。わかる。  人間をリアルに見ておられるから〈人嫌い〉じゃないと思います。〈人嫌い〉だった ら、こんなふうに見てられませんよ。目をつむります。  私なんぞなんでもタダだといっているので、とんだ〈ええ格好しい〉かもしれません。 もし、娘が同居していたら嫌われたかもしれませんね。もう独立しているので、ときど きやってきます。直接は悪くいいませんが、どうだか?  でも、お父さんもなにか考えがあってのことだったでしょうに。通じる相手じゃなか ったのでしょう。〈家族の評判をおとした〉というのは気の毒な気がします。  まだ幼い山猿塾までチェーンに1ケタ、ランクをあげてもらいましたのに。ただし、 私はチェーン店ではできるだけ物を買わないように努力しています。  タダを売り物にして爪をかんでいるようでは〈ええ格好しい〉の値打ちもないかな?  いろいろやってみながら考えます。いい体験をありがとう。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11311 ◆山猿塾だより◆155-横着自給計画 FAGRI掲載日 97/09/23 ◇マムシの標本◇ 甲山さん(#11282,3)  マムシの飼育はあたりに餌も豊富で不可能ではありません。だが、どこかで始めたマ ムシ牧場が、近隣からの苦情で困っている話を聞いた記憶があります。ぶっそうですか らね。  わが家ではマムシ酒が山猿塾参加者に見せるマムシの標本の役割も果たしています。 今日も突発訪問3組に見せました。標本は6本になっていますので、かなり間に合いま す。標本入れに適した透明の一升瓶が不足気味で、昨日、半ダースを無料で酒屋に譲っ てもらいました。  一番近いの農家の主人、山猿塾現地事務局さんも、今年はもう7匹捕ったといってい ましたが、全部、殺害廃棄です。もったいない。当地でも生け捕りできる人はほとんど いないので、昨日は地元の同級生に生け捕り技術を伝授しました。彼も「やってみよう」 といっていました。  御心配いただいた腕の方はまだ完治していませんが、肉体労働との組み合わせで、単 行本も書き下ろせるまでになりました。自宅の自力建設が自力治療を兼ねた一石二鳥で した。この点は今度の単行本に書きました。 ◇多品種少量生産の自給計画◇  不耕起栽培を基本に、多品種少量生産で食糧を最大限に自給していく計画です。大き くは、機械化、化学化、単作化などのいまの農業のあり方を見直していく実験でもあり ます。自給計画にも私なりのポリシーを生かしたいので、本業の勉強を兼ねて(なにご とも兼業が得意)、井野隆一『戦後日本農業史』などを読みました。  主食の米の生産は当分、近隣農家におまかせにして、小麦の栽培に挑戦してみようか と思っています。小麦は栽培量世界一の作物で、日本でも稲より新しいとはいえ、4世 紀の終わりごろから栽培されてきました。  戦後も60年代の高度成長までは、稲につぐ作物であり、アジアでも最も大きな小麦 粉の生産国でした。丹波あたりでも稲の裏作に栽培していました。だが、60年代の農 業基本法農政以来の農産物自由化によって、大豆とともに国内からほぼ完全に追放され てきた重要な作物です。  わが家でいま収穫、消費の最中の豆類の裏作に、秋まき小麦をまこうかと思案してい るところです。大豆とともに小麦はポストハーベストなどが最も心配される食糧でもあ ります。  大豆ととともに小麦の栽培をなんとか復活させようと考えています。しかし、すでに 当地では栽培している農家も見当たらず、近隣の農家の主人に「小麦はいつまくのか」 と聞いても知らないくらいで、栽培の伝統は断絶しています。種子は種苗会社にあるで しょうが、農家にはありません。  いま一番の悩みは、せっかく収穫しても製粉できるかどうかです。近くに製粉ができ るところがあるか探しています。小麦の播種は30アールですが、ショウガやニンニク など自給率が急減している作物から順次作付けし、土地の利用率も200%まで高めて いく計画です。  タマネギの苗も150本だけ農協に注文していますが、いろいろやってみて、当地に 適した作物の有機的な輪作体系を作り上げていこうと思います。山猿塾は周りを森林に 囲まれて孤立していますので、いくら雑草を茂らせても近隣から苦情はありません。雑 草大歓迎の横着農業が通用すれば、下の集落で農地も借りられるのですが……。 ◇堆肥不足と雑草緑肥◇  大豆や豆類は木灰を使っただけで肥料は使わずに、思った以上の作柄です。菜っぱ類 にはオガクズと生ゴミで作った堆肥を使用してきました。最近は狸のほかいろんな野生 動物がくるようになったらしく、捨てた生ゴミをほとんど食べてしまい、堆肥も造れな くなってきました。  そのため、人参には刈った雑草を緑肥として入れましたが、これもそこそこ収穫でき ました。同じ雑草緑肥で大根も順調です。農薬だけでなく化学肥料も使わない方針で、 各種の豆類を作って土地を肥沃にしつつ、自然の雑草などを活用すれば、夫婦二人の自 給自足程度の兼業ならなんとかなっていきそうです。機械も草刈り機以外は使っていな いので、適当な肉体労働にもなります。  合併浄化槽の汚泥を肥料に使えないものでしょうか。これができるとわが家の物質循 環は完璧に近くなるのですが……。経験者がいたら教えてください。浄化槽関係の衛生 会社では、肥料に使えるが、バキュームカーがないと汲み上げられないといっています。 実験の価値はありそうです。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11322 ◆山猿塾だより◆156-小麦の種子と製粉機 FAGRI掲載日 97/09/25 ◇意地でも小麦を作る◇  日本の国内自給率の低い農作物から順次、自給自足しようと計画していますが、国内 の農作物の生産基盤はすでに敗戦直後の食糧危機と同水準になっています。輸入食糧で 満腹になっているとその実態が見えませんが、実感的にわかり始めました。  地元の農協の元支店長が調べてくれ、地元の農協でも小麦の製粉設備がすでになくな っていることがわかりました。地元農協ではそもそも麦はすでに扱っていないというこ とです。いずれ直接、取材に行くつもりですが、深刻な事態になっています。  それで近隣の農家に小麦を粉に挽きたいので石臼はないかと聞きましたが、「もうそ んなものはない」ということでした。当地では小麦を作りたくても作れない事態になっ ています。種子はまけば育ちますが、小麦粉が生産できません。  改めて農水省「食糧需給表」で調べ直してみました。小麦の自給率は、1965年度 にはまだ28%でした。その10年後の75年度には4%まで急落しています。それ以 来、低迷し、95年度は7%です。  すでに20年以上これだけ自給率が低迷していては、生産基盤そのものが破壊されて しまうわけです。米の自給も集中砲火をあびており、今年の米市場や近年の農業の実情 を見ていると、米が小麦のようにならないという保障はありません。  意地でも小麦を作付けしようと思います。どなたか秋まき小麦の種子を時価で譲って いただけないでしょうか。在来種が一番ありがたいです。とりあえず1反分で十分です。 もう北海道などの春巻きの小麦だけになっているのでしょうか。  意地でも自力で製粉してでも小麦粉を作ろうと思います。小型の製粉機はないでしょ うか。いよいよなら石臼ででも粉をひこうと思います。どなたか手ごろな製粉機、ある いは石臼を時価で譲っていただけないでしょうか。少量でも小麦の製粉を委託できると ころが、できるだけ近いところにあればなお幸いです。 ◇小麦作付けから実地体験取材◇  アメリカの小麦戦略や穀物メジャーの日本侵攻など、手元にある書籍をもう一度体系 的に読み直そうと思います。そして、自給率が下がりその生産基盤も失われつつある作 物を作付けして自給しつつ、日本の農業が破壊されている現実を実地体験取材で追跡し ていこうと思います。  すでに日本の林業の現実を知って間伐材を活用し、自力で創作住宅を完成しましたが、 同じ実地体験取材で農業の現実にぶつかってみようと思います。そして、第三種兼業農 家として、滅びつつある日本の作物を自給自足する実物見本を残していこうかと構想し ています。とくに農業の生産現場のみなさんの御支援をお願いします。  自給率5%の大豆の自給自足は、不耕起栽培でも成功しました。小麦のように製粉加 工の必要もないので助かりました。早生の白大豆はたらふく食べ、種子用を残して収穫 を終わりました。地元の農家も白大豆は作っている気配がありません。  地元の同級生に白大豆をすそ分けしたら「農家が非農家からもらうなんて逆さまやな あ」といいました。同級生は「豆御飯にしたらおいしかった」といっていました。まも なく地元の市島町内のかみさん連中が数人やってくる予定です。収穫した白大豆を御馳 走する予定です。 ◇秋のキャンプ山猿塾に見本本ができそう◇  次作の拙著『自然に学ぶ創作健康住宅−素人だからできた自力建設』(仮題)は、原 稿がいま出版社の手にあります。その見本が11月1−3日の97秋キャンプ山猿塾ま でにできないかと、希望を伝えていますが、その願いがかないそうです。  地元の間伐材を活用したら、こんな立派な家ができるのだという実物見本が見えるよ うに、証拠写真をできるだけ多く掲載したいと思っています。大量の証拠写真をひっく りかえして、これから掲載候補を選び出します。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11339 ◆山猿塾だより◆157-見付かった製粉所 FAGRI掲載日 97/09/28 ◇幸運な情報ありがとう◇ jibさん(#11329)  さっそく情報をありがとう。やはりわからないことはなんでも聞いてみるものですね。 川下から川上の生産者をたどれるということを忘れていました。教えていただいた製粉 所をすぐ電話帳で探し、見付かりました。  電話で問い合わせましたが、山猿塾と私のことは地元の『丹波新聞』がもう6,7回 は書いていてくれるので、製粉所の主人も知っていました。だから、話も簡単に通じ、 助かりました。  地元の兵庫県氷上郡内でもわずかながら小麦を作っている農家があり、隣の多紀郡篠 山町からも製粉を依頼にくる人がいるそうです。まだ点在する麦作農家がどういう気持 ちや考えて作っているのか、いずれ会ってみたいと思っています。  10kgから製粉してくれるそうですから、自給自足で小口のわが家でもお世話にな れます。電話の感じでは製粉所の主人はかなり高齢でした。一度、会いたいと思ってい ます。  大阪OFFは盛んなようですね。拝見しています。私はちょっと大阪や東京には当分、 行く気になれそうもありませんが、気が向いたら大阪OFFのみなさんと、丹波の山猿 塾まで足を伸ばしてみてください。真冬は身がぴりっとしまって最適です。 ◇見通しが付いた小麦作付け◇  現地事務局(地元の農協係長)さんが小麦の種子も確保してくれました。これで小麦、 小麦粉の生産の見通しがつきました。あとは汗をかくだけです。丹波の黒大豆と小豆の あとに不耕起栽培の予定です。  黒豆はいま成長の最中ですが、一部を収穫しました。白菜をまく場所がなくなったか らですが、鹿は豆が固くなると収穫にくるという経験者の話ですから、びくびくしてい ます。鹿に収穫されないうちに早めに味見をしようという考えもありました。  第三種兼業農家も一人前に忙しい秋になってきました。わくわくしてきました。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11380 ◆山猿塾だより◆158-キャンプ準備と2期工 FAGRI掲載日 97/10/04 ◇初小豆で赤飯◇  一足早く色づいた小豆のサヤを摘んで干しました。ちょうど海外で暮らしている次女 夫婦がきたので赤飯にしました。小粒の小豆でしたが、柔らかくてうまい赤飯でした。 新豆の赤飯が早くも食べられるのは、自給自足だからこそでしょう。 ◇来夏のキャンプでは手打ち冷やしうどんを◇ サナギマンさん(#11349)  捕らぬ狸の皮算用ですが、来夏のキャンプ山猿塾では手打ちの冷やしうどんをメニュ ーに加えましょう。地元の同級生も団子汁が食べたいといっていました。ただ、不耕起 栽培でどこまでできるかは、やってみないとわかりません。わからないところがおもし ろいところです。  小豆は闇雲にばらまいて予想以上に収穫がありそうですが、雑草刈りに困った経験を 生かし、小麦は筋まきにしようと思います。そうすれば麦踏み、草刈り、収穫もやりや すくなると思います。サナギマン菜園や斜面以外の平地部分で、最大限に栽培したいと 思っています。 ◇97秋キャンプ山猿塾準備&作業計画◇  おおげさにいうと、第二期工事を始めています。作業小屋の後ろの急坂の傾斜を緩く して、普通の乗用車でも2、3台は駐車できるように土砂を取り始めました。上土(表 土)は本宅テラス下の斜面に入れ、ここを自家野菜が作れる畑にします。  大きな石を土止めに積んで石垣にしています。砂利は林道に運んでわだちを埋めてい ます。こぶし以上の石は外トイレの横の空き地にひろげています。ここに車庫を建てる ことにしました。余材を活用しますが、すでに丸太はほとんど使ってしまいましたので、 区有林の間伐材をもらうつもりです。  いま作業小屋を車庫としても使っていますが、今後、大豆や小麦を収穫したり、脱穀、 乾燥などの作業をする空間が必要です。キャンプのさいも雨が降っても使える空間が必 要ですし、薪や資材置き場も不足しています。  今後のサナギマン果樹園や下の田の活用を考えると、一輪車で下りられる程度の小道 くらいは必要です。駐車広場からの斜面は、しば(焚付け)置き場になっていますが、 ここに小道をつけて斜面にも野菜などが作れるようにしようと思います。  97秋キャンプ山猿塾までにどこまでできるかわかりませんが、道路の補修と駐車ス ペースを増やすところまではできると思います。マムシも冬眠に入ったら、石垣に茂っ ているササなどを刈る予定です。  石垣のすきまにしぶとく生き残っている茶の木を生き返らせ、お茶もある程度まで自 給したいと思います。2期工事が終わって、持てる土地がフル活用できたところで、も う少し土地を借りていきたいと思っています。 鶏の放し飼いをしたいところですが、勝手に作物を餌にされても困ります。あいた土 地につぎの作物を作付けしていくまでのあいだ、つぎつぎと移動できる小型鶏舎が作れ ないものかと、考えています。一定の土地があいているあいだだけ簡略な囲いができな いか、これも思案中です。  うまくいけば、彼らが自動施肥をやってくれます。鶏よりも雑草を食ってくれる草食 動物のつなぎ場所をかえて、順次巡回させる方が合理的かもしれません。いずれにして も、動物性蛋白質の自給も検討していくつもりです。  なにもないところから自宅を自力で建築し、からだもすっかり土方体質になりました。 第三種兼業農家にふさわしい体力ができたともいえます。机に向かっていると、汗をか きたくなり、不意に土方をやり始めます。すると頭の回転もよくなります。  いうまでもなく、本業の物書きの仕事もつづけます。すでにいくつかのテーマを追求 中です。生活の体勢も第三種兼業農家らしくなってきました。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11395 ◆山猿塾だより◆159-キャンプ食糧他 FAGRI掲載日 97/10/06 Nackさん(#11385)  4日は御苦労さんでした。翌5日にはみえださんがきてくれ、土方仕事を手伝ってく れました。届けてもらったキャンプ案内は、今日6日に発送しました。  キャンプの食糧として、地元産の新米と、わが家の丹波の黒大豆を当てにしておいて ください。黒豆御飯がよいのではないかと思います。  テラス下に上土を入れ、立派な野菜畑がほぼできました。2、3日のうちになにか菜 っぱの種をまく予定です。間引き菜、大根菜も提供できそうです。  ばらまいていた小豆は1、2週間のうちに収穫してしまいます。邪魔者がなくなるの で、いくらでもテントが張れます。遊び場も広く使えます。  小麦の種がいつ手に入るか未定で、いつまくのが適当か忘れてしまいましたが、収穫 だけではなく、みなさんで小麦をまいてもらったらいいのではないかと思います。  草刈りのあと、筋まきするだけです。種が土までとどくように、踏んだ方がよさそう です。すっかり忘れられている麦まきを、みなさんにもぜひ思い出してもらいたいです。  ふつうの畑とは違いますので、小麦をまいたあとでもいくら踏んでもかまいません。 今後は精一杯、農作物を作付けしていきますので、こんなに広く使えることはめったに ないと思います。  なお、マツタケの収穫が始まりましたので、山に入るのは要注意です。近隣の山で薪 拾いくらいなら平気です。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11414 ◆山猿塾だより◆160-間に合う新刊見本 FAGRI掲載日 97/10/09 JP3KVNさん(#11405)  ぜひキャンプ山猿塾においでください。京都府の真ん中というと、こちらに近そうで すね。こちらは南向きで日当たりがよいので、11月はじでも好天ならかなり気温が上 がります。京都や大阪の市内と大差はありません。  しかし、朝夕はかなり冷え込みます。今朝は7度でした。気温差が激しい時期ですか ら、お子さんたちの衣服は1枚多めに。 ◇次作著書見本が間に合います◇  出版社、編集者の協力で、拙著『やったぜ! わが家を自力建築−有毒住宅に住める か』の見本がキャンプ山猿塾に間に合います。参加のみなさんに一刻も早くぜひ手にと って見てもらいたいと、強力に注文をつけていました。  表題は編集者とのやりとりで、前記のように変えました。また、証拠写真をふんだん に使うため、予定の9章のうち2章をそっくり割愛しました。住宅関係だけにしぼり、 割愛分はまた別の企画で単行本に使う予定です。  拙著には「読者見学予約カード」を織り込んでもらいます。拙著発刊後は、原則とし て予約カード送付者だけ、創作住宅を案内させてもらうことにしました。それも日月の 週2回だけで、午後2時からに制限させてもらいます。  創作住宅はすでに私たちの仕事と生活の場になっています。従来の経験から、読者な どの突発訪問がつづきそうです。山猿塾式に「いつでも、だれでも、どうぞ」と案内し ていては、仕事と生活が成り立ちませんので、やむをえません。  また、拙著を読んでもらってから案内すれば、あれもこれも説明する必要はありませ ん。相手の関心に応じてお話しできます。  なお、キャンプ山猿塾期間中の参加者の見物は例外です。喜んで案内させてもらいま す。その後、独創的な創作家具もいくつか作っていますから、一度見てくれた方もキャ ンプ山猿塾の機会にぜひもう一度どうぞ。  今後も車庫兼物置のほか、風呂や土間ではく下駄などの小物も作る予定です。また、 地元の農家が捨てていたケヤキの古い臼を拾ってきましたので、杵も作る必要がありま す(たぶん売っていないだろうし、売っていても高そう)。  餅米も地元の農家からたっぷり仕入れましたので、いずれ餅つきを復活させたいと思 っています。足踏みの脱穀機が入手できない場合、どりあえず自給用の大豆、黒豆、小 豆などの脱穀用に使います。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ